自社ビルの活用事例
大手企業をはじめ、多くの企業が自社ビルのリースバックをしています。当面の資金繰りのため、キャッシュフローの改善のためなど、その重要性・有効性は年々高まっています。
事例① 自社ビルのリースバックで経営の健全化へ
- ■ご相談者
- 東京都江東区
中野聡さん(60歳)
会社経営(輸入販売)
ご相談内容
15年前、事業を拡大していく中で、4階建て自社ビルを建てました。交通の便も良く、銀行やお客様からの信用も得て、経営も順調でした。このあたりでは、知らない人もいないと思います。
ですが、数年前にひとつの事業が失敗。赤字が続いていたこと、負債が大きかったこともあり、事業を継続することを断念、撤退することになりました。
ひとつの事業をやめても人員を減らす訳にはいきません。幸いにも、主力事業が好調なので踏ん張っていますが、今のままでは主力事業で過去のマイナス分を返済していくばかりです。
主力事業に力を注ぎたいと思っていても、余力があまりないのが実情です。このままでは、頑張ってくれている社員も疲弊してしまいます。
現在、経営を見直しています。踏ん張っている状態から、プラスの成長に勢いづきたいと思っています。それにはまず、キャッシュフローの改善が課題でした。この場所で会社を続けてはいきたいですが、自社ビルの所有にはこだわりません。
リースバックで自社ビルを売却して、キャッシュフローを健全化したいと思っています。そして、主力事業をさらに伸ばしたいと考えています。
リースバックでの解決
■担当/浜崎
中野さんの経営する会社が所有するビルは、駅から近く、非常に分かりやすい場所に建っていました。建設時にも、銀行から積極的に融資を受けたということも肯ける立地でした。
中野さんは現在の経営状況について税理士の先生とも相談をしながら、自社ビルの売却をして、マイナス分を清算し、無理のない経営に移行するのが得策だろうと考えておられました。
今回のケースでは、自社ビルのローン残額3,800万円と、赤字事業での負債1,800万円をリースバックにより清算することが可能でした。
また、好調な事業では、この立地を活用しない手はなく、引き続きこの場所で事業を展開していくのが最善だと思われました。
中野さんはリースバックを利用したことで、資金繰りに悩む日々から解放されたそうです。そして、経営の立て直しに全力を入れておられ、主力事業は売上を伸ばしているそうです。
事例② テナント中の自社ビルをリースバック
- ■ご相談者
- 兵庫県神戸市
橋本洋一さん(63歳)
会社経営(印刷業)
ご相談内容
印刷業を営んでおります。25年前に開業し、設備投資も積極的にして、業績は右肩上がり、5年後には3階建ての自社ビルを建てました。
ところが、時代の流れで印刷単価がどんどん下がってきて、受注しても受注しても利益が上がらなくなりました。
現在は規模を縮小し、1階を自社で利用し、2階3階については貸しています。それでも借入れ分の返済や固定資産税の支払いを考えると、売却すべきだと感じています。
ただ、規模は小さいながらも事業は続けていきたいので、1階部分は引き続き利用したいと思っています。また、老後の資金に準備不足を感じていて、妻が不安に感じているので、リースバックに魅力を感じています。
リースバックでの解決
■担当/浜崎
所有しているビルの一部を自分たちで、一部を貸しているケースも少なくありません。
橋本さんのケースでは、自社ビル建設時のローンの残債務が1,400万円、銀行から運転資金として借り入れた800万円とあわせて2,200万円の返済が残っています。
リースバック後の家賃は、売却代金で決まります。高く売却すると、家賃は高くなり、安く売却すると、家賃は安くなります。
橋本さんの場合は、売却代金-ローンの返済額2,200万円=手元に残る額となります。
老後資金として手元に現金を残したいというご希望がありますので、できるだけ高く売却することが望ましいと思われます。しかし、橋本さんのケースですが、現在、2階と3階部分をすでに貸している状況です。このテナントの方に、迷惑をかけたくないという希望もお持ちでした。
結果、現在のテナントさんに迷惑をかけることなく、リースバックを行うことが出来ました。
橋本さんは、家賃は発生するものの、ローンと固定資産税の支払いから解放されたこと、老後資金も残せたことに喜んでおられました。
事例③ 本社ビルをリースバックでオフバランス化
- ■ご相談者
- 東京都練馬区
小浜仁さん(63歳)
会社経営(製造業)
ご相談内容
食品製造会社を経営しております。本社ビル(東京都内)と工場が神奈川にあります。
新たに銀行から借り入れをしたく決算書類を提出したところ、なかなか良い回答が得られません。そこで、本社ビルをリースバックする方法を考えているのですが、実際できるものなのでしょうか?
リースバックでの解決
■担当/浜崎
多くの銀行の担当者は、融資判断の際に、現預金が多ければ多いほどプラスに評価します。対照的に、本社ビルは利益を生まず、かつ、毎年の減価償却により資産価値は目減りするので、評価されづらいと言えます。
この本社ビルをリースバックすることで下記の効果があります。
①キャッシュフローの改善
②オフバランス化
③本社機能は変わらない
①「キャッシュフローの改善」については、言うまでもなく、売却代金が入ってきますので必然的に改善されます。すなわち、これは銀行担当者にとってはプラスの判断材料になります。
②「オフバランス化」とは、バランスシート(貸借対照表)上の「固定資産」から本社ビルが消えることです。
リースバックでは一度その不動産を売却するので、「固定資産」→「現預金」と変わります。そのため、本業の利益には直接影響がない本社ビルをバランスシート(貸借対照表)から外すことで、資産価値の目減り等の不安定要素が消えます。
その結果、バランスシート(貸借対照表)をリスクの少ない財務諸表にすることになるのです。
③「本社機能は変わらない」とは、リースバックの最大のメリットとも言えます。売却とともに賃貸借契約を結ぶことにより、外見上は以前となんら変わらず使用できます。
実際、小浜さんの会社もリースバックにより、売却代金と、新たな銀行からの借り入れにより、営業形態はそのままに大幅に資金効率が上がりました。